【「子どもたちをよろしく」@シアターシエマ】

◆「子どもたちをよろしく」(監督・隅田 靖/企画・寺脇研×前川喜平)
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 新型コロナ感染防止の問題が世間に広がる中、シアターシエマで「子どもたちをよろしく」を観ました。あのモリカケ問題で辞職した元文部科学省事務次官の前川喜平氏と同じく元文部官僚の寺脇研氏が企画した、子どもをテーマにした映画だということ以外、何の先入観も持たずに観たのですが、まるでドキュメンタリーか再現ドラマを観ているかのようなリアリティを感じました。


 この作品は、子どもの学校でのいじめと自殺というテーマを太軸にしながら、学校現場はまったく描かれておらず、その一方で友人を自殺に追いやる少年と義姉、自殺してしまう少年の背景にある家族の問題が横軸として深く描かれます。


 再婚した両親の連れ子同士の義姉弟。息子と妻に暴力を振るい義理の娘には性的虐待を迫る父に、母はなすすべもなくキッチンドランカーになってしまいます。姉は自らを「汚れた存在」と思い込んで風俗産業に身を沈めています。


 一方、同級生の友人は、母親に逃げられ風俗嬢を送迎する運転手となった父と二人で暮らしながら母の帰りを待つが、ギャンブル依存の父によって生活が破綻し、給食費や修学旅行費も払えず、やがてはガスや電気も止められてしまいます。

 そんな少年を主人公ら同級生はいじめの標的にしていく。しかし、義姉の職業の秘密を知った弟は、やがて自分もいじめの標的にされてしまうことを恐れるようになります…。


 作品全体が重苦しく、子どもたちの叫びが胸に刺さる。同時に、場面の節目ごとに、どこかで彼ら彼女らを救う手立てがあったはずなのに…という思いがこみ上げます。


 通常、子どものいじめや貧困をテーマにした作品であれば、そこに学校や地域など社会的な介入があって、救いの道が開かれるという展開になるところですが、まったくそういう場面が出てこないことにもどかしさを感じました。


 いや、「全くない」のではありません。たとえば「給食費が払えないようなら学校に相談に来て、と先生から言われた」「児童相談所がどうとか、という話があった」というセリフもあります。しかし、ギャンブル依存症の父親は勤め先から借りたお金さえギャンブルに注ぎ込み、息子や学校を顧みないのです。たしかにこの父親は親として問題だと思います。


 ただ、一方で「給食費が払えない家庭」と気づいた学校担任が「相談に来て」ではなく、この家庭を訪問していれば違う展開にもなったのかもしれない、と思ってしまいます。酷いいじめで制服が汚れていれば、学校も何か気づいたのではないだろうか、とも。就学援助や生活保護につながる道もあったはず、とも。


 ただ、要するに深刻な問題を抱えているほど「相談には出向かない」という事もあらためて思い知らされるのです。


 私たちの身のまわりには、すくい上げきれずにいるこうした子どもたちや大人たちがいるのだろうと気づかされます。その事を忘れてはいけないのだと。


 だからこそ「子どもたちをよろしく」というタイトルなのだということが胸に突きつけられました。


 シアターシエマでは、この上映にあたって企画者の寺脇研さんを迎えてのトークイベントを予定していましたが、新型コロナウィルス感染防止のため、直前でイベントが中止となりました。新型コロナ感染禍が落ち着いたら、あらためて寺脇さんを迎えて上映の機会を持ちたいとのことなので、その時はぜひ多くの方にご覧いただきたい作品です。
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