貧困問題全国キャラバン 市民集会
午後から、日弁連と佐賀県弁護士会による「貧困問題全国キャラバン市民集会~セーフティネットの現状と課題~」がiスクエアビルの5階で開かれていたので、私は、遅れての参加でしたが、休憩後のパネルディスカッションから聴くことができました。
パネリストは、河野 聡氏(日弁連貧困問題対策本部の副本部長)、森 周子氏(佐賀大学経済学部准教授)、枝吉浩誉氏(佐賀県社会福祉協議会まちづくり課係長)、荒金健次氏(佐賀市東与賀支所長)、山口邦彦氏(佐賀労働局職業安定部職業対策課長)のみなさんで、県弁護士会の貧困と人権に関する委員会の委員長である辻 泰弘弁護士がコーディネーターを務めました。
それぞれの立場から、貧困からの脱却を図るために必要な憲法論からの問題提起、諸外国と比較して、あるべきセーフティネットの姿、生活福祉資金など社会福祉協議会の現場の問題、佐賀市福祉事務所と生活保護行政の現状、ハローワークの現場と新しい福祉の現場と連携した新しい制度の概要、などが報告されました。
とくに話が集中したのは、生活保護における車の保有の問題です。生活保護を受けるときには「車の保有は認められていない」というのが原則ではありますが、通院や事業用、交通の不便な地域など一定の条件のある場合は認めるという通達があります。ところが、現場ではなかなかそれが活かされていないというのが実態です。
これについて、佐賀市の状況を報告した荒金さんは、「佐賀市では保有を認めているのは8台、ただし全て障害を持つ人。また、就労の見込みがあるなど、急いで処分しなくてもいいとしている「処分指導保留」の車が16台です。これでも以前よりは緩和されていると思う。自分は保護課長の前は障害福祉課にいたが、障害者の方が免許を取って車を運転するようになると、物理的に移動手段ができるだけでなく、心理的にも積極的になれているのを感じた。その点からも、保護行政において、車の保有は求職活動や通勤、通院などにも必要だし、精神的なインセンティブにもなることを考えて、もっとゆるやかにすべきだと思う。そのことは、保護課長の時代から常々国や県にも提言をしてきた」と発言なさいました。
また、窓口での相談が急増しているのに、保護課のケースワーカーが足りなくて、1人当たりの受け持ち件数は標準が80世帯となっているのに、佐賀市は100世帯を超えているため、就労支援など十分な手が差し伸べられずにいる、という現状も報告されました。
荒金さんの発言は、日弁連の「生活保護における生活用品としての自動車保有に関する意見書」(2010年5月6日)の趣旨を現場から跡付けるものとして、「大変励まされる」と歓迎されていました。
このほか、貧困問題の根本解決のためには、まずは貧困の実態を徹底的に調査・検証し、貧困をなくすための具体的な目標をかかげ、それを遂行する責任ある機関を設置することが必要であり、同時に、貧困問題の解消についての市民意識を喚起することも大事だ、との提起がありました。
さらに、政策的には、貧困の連鎖を断ち切ること、弱者の対立を解消すること、多くの専門家や地域ボランティアの協力関係を構築することを柱にしていくことが求められる、と述べられました。
後半はあらかじめ文書で出すようになっていた会場からの質問や意見が紹介され、それに対してパネラーがコメントするという形が取られました。
そのしょっぱなに、佐賀県革新懇の代表世話人である本多俊之弁護士からの質問が紹介されました。それは、「貧困問題の解消に向け、社会保障を充実させなくてはならないが、その財源についての考えは?」というものです。
はたして、その質問への的確な回答は残念ながらなされたとはいえません。佐大の森准教授が「税金でみるとして、国が見るか市町村がみるか、または消費税か、などの考え方はある」という大づかみなコメントをされた以外は、はっきり言って、パネラーのみなさんは「固まってしまった」という印象を受けました。おそらく、個人的にはいろいろな考えをもっておられるのでしょうが、それを、肩書きを持つパネラーの立場で発言することに躊躇があられたのかどうか・・・・。この点は、率直に言って残念でした。
日弁連の第54回人権大会で「わが国の社会保障のグランドデザインを考える」というシンポジウムの議論の方向性として、
1、憲法の定める個人の尊厳、平等主義、生存権、教育を受ける権利、働く権利などを前提に、わが国に居住するすべての人々に平等に保障される制度とする
2、障害者・高齢者・女性・子ども・若者・外国人などそれぞれについて、基本理念に基づく権利保障を考える
3、財源を理由に社会保障を制限するのではなく、憲法的価値に沿って優先順位を見なおし、税の所得配分機能を強化する
4、制定過程及び検証過程における民主的手続き
5、簡易迅速な救済手続き
という項目が紹介されましたが、財源問題に関わっては、この3つ目の項目がはっきり示していると思います。ましてや消費税などもってのほかなのですが、なぜそういう言葉が、こういうシンポジウムにおいてさえ全くでてこないのか、というのがちょっと不満ではありました。
このほかの会場からの質問・意見の中で、むとう明美県議から、「佐賀県議会で生活保護の規制を強化することにつながるような意見書が反対1名のみで採択されたことは遺憾」という意見が紹介されましたし、私も「ホームレス支援の一環で、住居の確保に至る前に緊急の一時保護施設が街なかに必要。現在は県内に2ヵ所、社会福祉法人の示唆説があるだけで、いずれも郊外で交通も不便なので、就労活動などを行うためにも県庁所在地の街なかに設置すべきではないかと思う。他県の状況はどうか」という質問を出したのが紹介されました。
が、この問題についても、「そうそう」とうなづきながらも他県の事例を持ち合わせた方がなかったようで、「今後の検討課題」ということになりました。
最後に日弁連の副会長である金子武嗣弁護士(大阪弁護士会会長)がまとめの発言の中で、車の保有についての条件緩和を現場からも言ってもらったのは心強い、厚生労働省が発するメニューが社会福祉協議会やハローワークなどの与信管理のできない団体に「資金制度」を押しつけることになっているのでは、という懸念、また、多重債務問題との関係で貸金業法において「総量規制」をうたいこんだが、それによって借りられなくなった人がどこへ行くのかも心配であり、本当は社会福祉協議会の生活福祉資金などに頼りたいところではあるが、それが上手くいくのかどうか、という懸念、人材確保の課題も示されました。
そして、日弁連としては貧困問題の旗を高く掲げ、その解決の道をいろいろと試みて行きたい、という決意が語られました。
閉会の挨拶に立った県弁護士会の桑原たかひろ副会長は「そもそも我々などに相談すらできずに埋もれている人も多いのではないか。そういう人たちにいかに救いの手を差し伸べていくのかが課題」と述べられましたが、その通りだなあと思いました。
全体は3時間という長丁場だったようですが、後半だけでも充実したシンポジウムでしたし、佐賀市の保護課長など行政からも参加しておられたのは心強いことでした。
パネリストは、河野 聡氏(日弁連貧困問題対策本部の副本部長)、森 周子氏(佐賀大学経済学部准教授)、枝吉浩誉氏(佐賀県社会福祉協議会まちづくり課係長)、荒金健次氏(佐賀市東与賀支所長)、山口邦彦氏(佐賀労働局職業安定部職業対策課長)のみなさんで、県弁護士会の貧困と人権に関する委員会の委員長である辻 泰弘弁護士がコーディネーターを務めました。
それぞれの立場から、貧困からの脱却を図るために必要な憲法論からの問題提起、諸外国と比較して、あるべきセーフティネットの姿、生活福祉資金など社会福祉協議会の現場の問題、佐賀市福祉事務所と生活保護行政の現状、ハローワークの現場と新しい福祉の現場と連携した新しい制度の概要、などが報告されました。
とくに話が集中したのは、生活保護における車の保有の問題です。生活保護を受けるときには「車の保有は認められていない」というのが原則ではありますが、通院や事業用、交通の不便な地域など一定の条件のある場合は認めるという通達があります。ところが、現場ではなかなかそれが活かされていないというのが実態です。
これについて、佐賀市の状況を報告した荒金さんは、「佐賀市では保有を認めているのは8台、ただし全て障害を持つ人。また、就労の見込みがあるなど、急いで処分しなくてもいいとしている「処分指導保留」の車が16台です。これでも以前よりは緩和されていると思う。自分は保護課長の前は障害福祉課にいたが、障害者の方が免許を取って車を運転するようになると、物理的に移動手段ができるだけでなく、心理的にも積極的になれているのを感じた。その点からも、保護行政において、車の保有は求職活動や通勤、通院などにも必要だし、精神的なインセンティブにもなることを考えて、もっとゆるやかにすべきだと思う。そのことは、保護課長の時代から常々国や県にも提言をしてきた」と発言なさいました。
また、窓口での相談が急増しているのに、保護課のケースワーカーが足りなくて、1人当たりの受け持ち件数は標準が80世帯となっているのに、佐賀市は100世帯を超えているため、就労支援など十分な手が差し伸べられずにいる、という現状も報告されました。
荒金さんの発言は、日弁連の「生活保護における生活用品としての自動車保有に関する意見書」(2010年5月6日)の趣旨を現場から跡付けるものとして、「大変励まされる」と歓迎されていました。
このほか、貧困問題の根本解決のためには、まずは貧困の実態を徹底的に調査・検証し、貧困をなくすための具体的な目標をかかげ、それを遂行する責任ある機関を設置することが必要であり、同時に、貧困問題の解消についての市民意識を喚起することも大事だ、との提起がありました。
さらに、政策的には、貧困の連鎖を断ち切ること、弱者の対立を解消すること、多くの専門家や地域ボランティアの協力関係を構築することを柱にしていくことが求められる、と述べられました。
後半はあらかじめ文書で出すようになっていた会場からの質問や意見が紹介され、それに対してパネラーがコメントするという形が取られました。
そのしょっぱなに、佐賀県革新懇の代表世話人である本多俊之弁護士からの質問が紹介されました。それは、「貧困問題の解消に向け、社会保障を充実させなくてはならないが、その財源についての考えは?」というものです。
はたして、その質問への的確な回答は残念ながらなされたとはいえません。佐大の森准教授が「税金でみるとして、国が見るか市町村がみるか、または消費税か、などの考え方はある」という大づかみなコメントをされた以外は、はっきり言って、パネラーのみなさんは「固まってしまった」という印象を受けました。おそらく、個人的にはいろいろな考えをもっておられるのでしょうが、それを、肩書きを持つパネラーの立場で発言することに躊躇があられたのかどうか・・・・。この点は、率直に言って残念でした。
日弁連の第54回人権大会で「わが国の社会保障のグランドデザインを考える」というシンポジウムの議論の方向性として、
1、憲法の定める個人の尊厳、平等主義、生存権、教育を受ける権利、働く権利などを前提に、わが国に居住するすべての人々に平等に保障される制度とする
2、障害者・高齢者・女性・子ども・若者・外国人などそれぞれについて、基本理念に基づく権利保障を考える
3、財源を理由に社会保障を制限するのではなく、憲法的価値に沿って優先順位を見なおし、税の所得配分機能を強化する
4、制定過程及び検証過程における民主的手続き
5、簡易迅速な救済手続き
という項目が紹介されましたが、財源問題に関わっては、この3つ目の項目がはっきり示していると思います。ましてや消費税などもってのほかなのですが、なぜそういう言葉が、こういうシンポジウムにおいてさえ全くでてこないのか、というのがちょっと不満ではありました。
このほかの会場からの質問・意見の中で、むとう明美県議から、「佐賀県議会で生活保護の規制を強化することにつながるような意見書が反対1名のみで採択されたことは遺憾」という意見が紹介されましたし、私も「ホームレス支援の一環で、住居の確保に至る前に緊急の一時保護施設が街なかに必要。現在は県内に2ヵ所、社会福祉法人の示唆説があるだけで、いずれも郊外で交通も不便なので、就労活動などを行うためにも県庁所在地の街なかに設置すべきではないかと思う。他県の状況はどうか」という質問を出したのが紹介されました。
が、この問題についても、「そうそう」とうなづきながらも他県の事例を持ち合わせた方がなかったようで、「今後の検討課題」ということになりました。
最後に日弁連の副会長である金子武嗣弁護士(大阪弁護士会会長)がまとめの発言の中で、車の保有についての条件緩和を現場からも言ってもらったのは心強い、厚生労働省が発するメニューが社会福祉協議会やハローワークなどの与信管理のできない団体に「資金制度」を押しつけることになっているのでは、という懸念、また、多重債務問題との関係で貸金業法において「総量規制」をうたいこんだが、それによって借りられなくなった人がどこへ行くのかも心配であり、本当は社会福祉協議会の生活福祉資金などに頼りたいところではあるが、それが上手くいくのかどうか、という懸念、人材確保の課題も示されました。
そして、日弁連としては貧困問題の旗を高く掲げ、その解決の道をいろいろと試みて行きたい、という決意が語られました。
閉会の挨拶に立った県弁護士会の桑原たかひろ副会長は「そもそも我々などに相談すらできずに埋もれている人も多いのではないか。そういう人たちにいかに救いの手を差し伸べていくのかが課題」と述べられましたが、その通りだなあと思いました。
全体は3時間という長丁場だったようですが、後半だけでも充実したシンポジウムでしたし、佐賀市の保護課長など行政からも参加しておられたのは心強いことでした。
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