8月16日、お盆最後の日曜日。
京都は大文字の五山送り火の日です。新型コロナ対策で、松明を灯す場所を減らすそうですが、いろいろな歴史的なお祭りが中止になる中で、なんとか繋いでいかれるとのこと、よかったです。
今日も朝から陽射しの強い1日ですが、暑さに負けずに過ごしたいものです。

昨日の投稿に書けなかったことを少し。
戦没者追悼祈念式典での安倍首相のあいさつは、天皇を前に厳粛な態度でありながらも、命を散らした日本人310万人のことしか言及せず、アジア一帯で繰り広げた加害の責任については、一切触れませんでした。それでいて「国際社会で対話の関係をリードする決意」などと述べた件は噴飯ものというほかありませんでした。
むしろ、天皇の方で「深い反省」を述べたことと比べると「再び政府の行為によって戦争の惨禍を繰り返すことのないやう」という日本国憲法前文の平和の決意を「第1条」に規定された天皇が述べ、第99条で共に憲法遵守義務を課された国務大臣としての内閣総理大臣が、真摯な反省のない中途半端な式辞を述べるという恥ずかしい状態だったと言わずにおれません。

そんな戦後75周年の8月15日の夜、NHKで放映されたドラマ「太陽の子」は興味深いものでした。今は亡き三浦春馬さんが出演されているというのもあって、楽しみに観たのですが、内容はいささかショッキングでした。
8月6日、9日の広島・長崎に原爆が投下されたことで「唯一の戦争被爆国」として日本がなすべき国際的役割は…と、この1週間考えてきたのですが、このドラマでは、その日本が実は京都大学で原子核爆弾の研究をしていたというテーマで、憚りながら、731部隊や九州大学での生物・細菌戦に向けた人体実験のことは知っていましたが、原爆の研究までしていたということがあったのは初めて知りました。
主人公は「科学者として実験によって新しい発見をしたい」という欲求で京大の実験室に加わっていますが、研究室の仲間の中には、「科学者が兵器を作ることはどうなのか、間違っていないのか」と苦悶する者もいます。
研究室の教授は「たしかに、科学者として兵器研究をするのはためらいがあるが、実際に戦争が起きているのだから仕方ない。これまでの戦争はエネルギー問題をめぐって起きていた。原子力を人類が制御できるようになったら、無限のエネルギーを持つことができるようになり、戦争をなくすことにつながる。これは原子力による解放だと捉えている」と語ります。
この教授の言葉も、のちのスリーマイルやチェルノブイリ、東日本大震災での福島第一原発事故で覆されることになると思いながら聞いていました。
研究室での実験は終戦間近まで繰り返されますが、8月6日に広島に原爆が投下されたことで、その歩みがいったん止まります。広島に落とされた原爆の実態を調査しよう、と研究室のメンバーは被爆直後の広島に入り、その惨状を目にして「僕らが作ろうとしていた原子核爆弾の正体はこれだったのか」と呆然とする場面は印象出来でした。
その後、「広島、長崎の後は京都が狙われる」という噂が広まる中で、主人公は家族に日本海側の綾部の親戚に逃げるように言い、自分は比叡山に登って核爆弾の炸裂する瞬間を科学者の目で見たい、と告げます。
母親は「そんな恐ろしいことを。ご近所を残して自分たちだけ逃げるわけにもいかない。科学者の息子を持った母の責任として私はここに残る」と決然と返します。
ドラマは、比叡山への山道を分け入っていく主人公の姿と、75年後の広島の原爆ドームの下にたたずむ主人公の幻の姿で終わるのですが、終わりかたが唐突に感じました。
結局、京都には原爆が投下されることなく終戦を迎えたので、主人公は命を落とすことはなかったと思います。となると、戦後の主人公はどう生きたのか、というところもぜひ、見たかったものです。
また、主人公の弟役の三浦春馬さん。特攻で命を散らしたのですが、出撃前にいったん帰省したときに「死ぬのが怖い」と海に入水しようとする場面があり、実際の三浦さんのもがきと重なるように思えたのは私だけでしょうか。



さらに、主人公の幼なじみで、建物疎開のために主人公宅に父と共に身を寄せて兄妹同然に暮らしている女学生・有村架純がいい味を出していました。
勤労奉仕で出会った下級生の少女たちに「将来の夢は?」と聞くと「結婚してお国のためにたくさん子どもを産みたい」と答えるのを聞いて愕然とした彼女は「戦争が終わったら、教師になる。よりよい世の中にするために、子どもたちがしっかり自分の将来を考えることができるように」と主人公たちに告げます。
「もう、戦後のことを考えているのか」と驚く主人公と弟に向かって「この戦争は、日本を良くするためなんでしょう?だったら、戦争が終わったらどんな日本にするのか、考えなくちゃ。お兄ちゃんは科学者として日本のためにしっかり研究を、(小さいお兄ちゃん)は、戦地から無事に帰ってくること!」と励まします。
死ぬことしか考えていなかった兵士や当時の男性にとって、この女学生の発想はとても新鮮だったようです。


この女学生の戦後の姿も見てみたかったと思いました。
約90分足らずのドラマでしたが、2時間ドラマにして、もう少し戦後まで掘り下げてもらいたかった作品です。

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