【マリー・アントワネット最後の日々〜フランス革命は女性を解放しなかった】

 7月3日放送のEテレで「マリー・アントワネット最後の日々」(「ドキュランドヘようこそ」)というドキュメンタリー番組を観ました。
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 新たな資料に基づいて、ドラマと研究者のインタビューで構成されたもので、ロベスピエールの恐怖政治につながっていく流れやまともな証拠も示されないままの「死刑の結論ありき」の暗黒裁判など、いわばフランス革命の負の部分もあぶり出されていました。


 国内で革命が燃え上がる一方で国外からはオーストリアが攻め入ろうとするなど、政治が安定しないもとで多くの国民が飢餓に喘ぎ、ロベスピエールら革命政府に対する不満が沸きつつあったため、民衆の不満をそらすスケープゴートとして標的にされたのがアントワネットだったというわけです。


 革命裁判所の公判では、15名の陪審員も裁判長も革命政府に忠実な立場からの「公平公正」を標榜し、登場する証人がことごとく噂話の域を出ない証言でまともな証拠を示すことができない状況であっても、民衆の憎悪の感情が渦巻く中での裁判の結論はすでに決まったものとなっていました。 
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 マリー・アントワネットは皮肉にも革命政府に捕らえられて以降に王妃として目覚め、女性としても母としても強くなったと言われていますが、この公判を通してその様子を垣間見ることができます。


 劇画「ベルサイユのばら」9巻にも出てくる場面ですが、ロベスピエールのライバルであった急進派エベールが証人に立ち、アントワネットに対して幼い息子ルイ・シャルルとの「母子相姦疑惑」をでっち上げた時に、法廷内の全ての母親・女性たちに向かって母性からの抗議の声をあげます。それが女性たちの共感を呼び、後になってエベールは立場を悪くし処刑されることになります。
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 酷いのは、公判の最終弁論で、アントワネットの2人の弁護人がそれぞれ「感情ではなく法的に判断すべき」「まともな証拠は何ひとつ出されなかった」ということを最低限の言葉で(というのは、余計なことを言えば反革命のかどで逮捕されるから)弁護をしますが、弁論を終えたらただちに憲兵に連れて行かれる、という場面です。


 また、陪審員が最後に賛否を表明するのも非公開ではなく公開の場で一人一人発言させることによって、異論を唱えにくい仕組みを作っていたというのも恐怖政治のシステムだと紹介されていました。これはヒットラー政権、スターリン時代のソ連や中国の文化大革命、カンボジアのポルポト政権、などにも共通する姿だと思えます。
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 さらにこの番組の今日的な指摘として重要だと思ったのは、エベールの下衆なでっち上げの根底には、エベールが「女は家を守っていればいいのであって、政治にしゃしゃり出たり、家をほっぽり出して遊び歩いたりするものではない。あの女(アントワネット)を処刑するのは、全ての女たちへの見せしめなのだ」という思想があったことだという部分です。


 そして、それが証拠に、1789年10月には雨の中をずぶ濡れの女たち6千人が「パンをよこせ」「国王と王妃をパリへ」と押し寄せて、国王一家がベルサイユ宮殿からパリのチュイルリー宮殿に移されることなった「ベルサイユ行進」は富山の米一揆のように女性たちが立ち上がったものでしたが、アントワネット処刑のあと、それまでの女性政治サロンが閉鎖されたそうです。たしかにフランスにおいて女性参政権が実現したのは、意外にも日本と同じ第二次世界大戦後なのです。


 1789年のフランス革命が「自由・平等・友愛」を旗印にし、1830年の7月革命を描いたドラクロワの名画で民衆を率いるのが「自由の女神」であったとしても、実は女性の権利を奪い続けたままだったというフランス革命の限界と、女性たちのたたかいは今に続いているということを押さえておく必要があるとあらためて認識しました。


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