【「人生をしまう時間」@シアターシエマ】

 年末の忙しい時でも、観たい映画はありますね。

 ということで、お昼をはさんでシアターシエマに行き「人生をしまう時間(とき)」(下村幸子監督)を観てきました。
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 NHK BSのドキュメンタリー番組で見たことがあるのですが、再編集しての映画化というので楽しみにしていました。

 埼玉県新座市の堀ノ内病院の在宅医療チームで働く80代と50代の2人の医師と患者・家族たちの姿をみつめるドキュメンタリーです。

 「住み慣れた場所で最期を迎えたい」と多くの人が願っていると思いますが、経済的な条件、医療体制の環境などによって、それが叶えられるかどうかは様々です。

 私は以前、在宅で看取りを進めている小笠原文雄医師の「なんてめでたいご臨終」という本を読んで、在宅医療の可能性に期待を持った1人ではありますが、この映画は、単純に在宅医療をバラ色に描いているというわけではありません。むしろ、患者本人や家族と医療チームのドラマだと思います。


 全くのひとり暮らしの方の所に毎日娘さんが通ってきて、「特に医療的なことは望まない、自然に逝ってくれたらいい」と見守りを続けられるのですが、最後には訪問看護の助けを得ながら穏やかに旅立ったお母さん。


 「薬なんかいらん」「入院なんかしない」と強情を張る父親の介護をしている70代の息子さんが、介護疲れになってるのを察知して、入院を勧めるドクター。


 80代で1年前から2階の部屋から降りられなくなった妻を、介護サービスを一切受けずに同じく80代の夫が1人で世話をしているのを見て、なんとか介護サービスにつなげようとする医師。ようやく介護ベッドが入り訪問入浴サービスも受けられ「助かった」という夫ですが、一方の妻は、以前、布団で寝起きしながらトイレの世話も夫に頼りながらも元気におしゃべりをする勢いがあったのに、介護ベッドに窮屈そうに収まって「お風呂は来なくていい」と元気をなくしてしまっている姿も映ります。
 不便さがかえって元気にさせていた部分もあるのかな…と考えさせられるシーンでもありました。また、なぜ介護サービスを受けないのか、施設を利用しようとしないのか、という背景には「お金がなければ少ない年金ではどうしようもない」と諦めている夫の思いがあったのも描かれます。


 103歳で息子夫婦の世話を受けながら、それなりに元気に過ごしていた女性は、「自分1人で留守番できるから、と言ってもそれでは家族が安心して温泉にも行けないでしょう。たまにはショートステイを使って、お泊まりしてみたら」と医師が説得。やがてショートステイを繰り返す中で施設への入所につながっていくのですが、ご本人は納得していない様子が見て取れました。それでも、最後には施設で静かに旅立たれたとのこと。


 90代でひとり暮らしの男性は、最近トイレが間に合わないことが多く、娘がトレーニングパンツを使うように勧めても「プライドが許さない」と拒否するというので、娘婿さんと医師が「男同士で話そう」と説得する姿も印象的でした。


 子どもが親を看取るばかりでなく、その逆もまた。50代で子宮頸がんを患った娘を看取るお母さんのエピソードも心に響きました。


 最も長く描かれて印象に残ったのは、47歳の全盲の娘さんが90代の癌の父親を介護する姿です。幼い頃に全盲になった娘を大切に育て、脳梗塞で倒れた妻を看取り奮闘してきた父親は、肺がんで入院を勧められても「不自由な娘がいるから」と在宅での療養を選びます。全盲の娘は、父の妹など親戚が通ってきて一緒に料理をしたりしながら父を全力で介護します。
 最後は娘自身が呼吸を確認し、死亡時刻を確認するという姿も。


 一人一人のエピソードが濃くて、我が親のことを考えながら胸がギュッとなる部分もあるのですが、それ以上に温かくて、結構笑っていた自分がいました。


 誰もが必ず迎える死を、どのように受け止めて過ごすのか、柔らかい気持ちで考えることのできる映画です。


 この映画はUDキャスト対応で、スマホなどのタブレット端末にインストールされていれば、イヤホンを持参して音声ガイドを聴きながら見ることができるようです。みないろ会の音声ガイド作成班としては、どんな音声ガイドを施されているのか、興味津々です。
 短い上映期間だと思いますが、ぜひ、お正月明けにもう一度観に行きたいと思います。こんどはイヤホン持参で。

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