佐賀県弁護士会が「子どもの貧困」で講演会

 今日の午後から、佐賀県弁護士会主催で「画像子どもの貧困とは~子どもにとって『公正な社会』をめざして~」と題するシンポジウムと講演会があり、参加してきました。

 全体は2部構成で、県弁護士会の東島会長の挨拶のあと、第1部は現場からの報告として、「小中学生は今」(県教組 坂口広則さん)、「学費滞納で中退、経済的理由で進学できない高校生の実態」(県高教組 坂本 景さん)、「児童虐待における貧困」(県中央児童相談所 児童福祉士 香月さん)のテーマで実態が語られました。

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 第2部は国立社会保障・人口問題研究所の阿部 彩さんが「子どもの貧困」と題して講演。

 阿部さんは、当初、途上国の貧困について考え画像ていたところ、通勤途中に路上生活者の姿が目立つように思われ、日本の貧困問題について目を向けるようになったとのこと。
 ところが、日本政府は、貧困についての公的データを持っていないというのです。1960年代以降、厚生労働省は、低所得層についての把握をしなくなったといいます。それは、1970年代以降「1億層中流化」といわれるようになってからだそうです。1980年代から2009年と、大きく経済構造も変わっているのにもかかわらずそういう「神話」にとらわれて、政府は「貧困があること」すら認めようとしてこなかったわけです。
 
 しかし、実際は、ずっと以前から貧困は進んでいたのに、社会がそれに目をつぶってきたというのが、日本の実情と言えます。

 阿部さんは、豊富な資料と客観的なデータで、日本の子どもの貧困の実態をあぶり出し、所得保障をすることが貧困から抜け出す効果につながり、また、社会も健全な報告に発展するということを導き出す話をしてくださいました。

 よくいわれることですが、こどもの教育費に対する政府の公的支出は、OECDで最低といいます。これは、子ども一人当たりにすれば、さほど低くはないのですが、その中身を見ると、ほとんどが人件費と設備費であって、子ども1人を教育するに必要な給付、というのはきわめて少ないのが実態だそうです。その結果、7人に1人が「貧困」状態にある、といわれる事態を生み出しています。

 子どもの貧困率はOECD加盟国で9番目です画像が、母子世帯の貧困率では、なんとトルコについで2番目だそうです。しかも、母子世帯の就労率は4番目に高く、母親の就労率が非常に高いのにもかかわらず、経済状況が厳しく、政府や子どもの父親からの援助も少ない、というのが日本の母子世帯の置かれている実態です。
 さらに、両親のいる世帯でみたとき、片親しか働いていない場合に比べて両親共に働いている場合に、子どもの貧困率はどの国でも下がるのに、日本ではほとんど影響がない、つまり、共働きしても効果がないほど父親の給与も母親の賃金も低い、ということがいえます。

 そして、会場から驚きの声が上がったのは、所得の再分配(控除や給付などの公的関与)の前後で貧困率を比べると、これまた、どの国でも再分配後は急激に貧困率が下がるのに、唯一、日本だけは、再分配後に貧困率があがっているのです。

 すなわち、母子世帯や低所得者層に対して、効果的な所得再分配がなされておらず、むしろ低所得者に負担が重く高所得者に負担が軽い、という逆転現象が日本の実態だそうです。

 欧米での研究によると、スラム街の子ども達を無作為に選んで、所得給付をするグループとしないグループに分けて、長期間観察した結果、明らかに、所得給付を行なったグループのほうが改善が見られたということで、このことが欧米において「給付制度」が充実される根拠となっているのだそうです。ところが、日本ではその認識が薄く、児童扶養手当などは月5万円程度しかなく、また、広く薄く、ということで、低所得層への効果的対応ができていないわけです。

 そういう提起をうけて、今後の政策を考える必要がある、と大いに刺激を受けました。
 なお、この講演会には、佐賀市の田部井教育長の姿もありました。

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